東京地方最低賃金審議会は、7月17日の審議会で中央最低賃金審議会の目安伝達を受けて東京の最低賃金について審議を開始し、わずか4日後の21日に中賃の目安額28円に上乗せすることなく、「28円引上げ・時間額1041円」を東京労働局長に答申しました。
東京地評、東京春闘共闘は、東京地方最低賃金審議会に加盟組合から、かつてない多数の意見書(26団体、女性センター 72件、東京土建204件)を集中し、時給1500円以上への引上げを求める署名も2万866筆を提出しました。審議に先立ち、東京労働局にも2度要請し、東京地評が2019年に実施した「最低生計費調査」に基づく若年単身者の最低生計費の結果(北区において時給1640円は必要、2019年12月発表)と、子育て世代の生計費額結果(30代・子ども2人の4人世帯で年収650万円は必要、2020年12月発表)を審議会に資料提供しました。また、2回にわたる「食糧支援プロジェクト」で浮き彫りとなったコロナ禍での貧困の深化と拡大、加盟組合員の最賃近傍で働く労働者が憲法で保障された健康で文化的な生活をおくれない悲惨な実態を報告し、最低賃金大幅引き上げの必要性を強く訴えてきました。今回の答申に、多くの切実な実態と要望が反映されず、東京で生きるに必要な最低賃金額に遠く及ばない中賃の目安額の答申となったことは到底容認できません。東京地評、東京春闘共闘は、加盟組合と共に異議申立の取り組みを強めていきます。
東京の最低賃金の審議は目安伝達において会長が、コロナ禍の厳しい経済と雇用・賃金情勢を考慮しつつ、最低賃金法の趣旨、最低賃金引き上げが経済に与える二面性の影響、最賃法の趣旨に則った審議のあり方について所見を述べ、東京地評、東京春闘共闘の加盟組合の多数の意見書が少なからぬ影響を与えていたことが見られました。
しかし東京の審議会は、全国で最初の(地賃)答申を出す異例のスピード審議で、中賃の目安額に上乗せすることなく、目安伝達からわずか4日後に「28円引上げ」を答申しました。東京オリ・パラの開会前の「駆け込み答申」の感は否めません。地域間格差の温床であるランク別最低賃金制下では、Aランク地域への影響も懸念されます。最賃近傍で働く多数の正規・非正規労働者、社会機能の維持に必要なエッセンシャルワーカーがコロナ禍、命がけで働く首都東京で、最低賃金大幅引き上げの役割を果たせなかったこと、目安額を上乗せする牽引役を担えなかったことは、あらためて遺憾です。
使用者側委員が答申に反対し審議会の席を立ったことも、直接的ではないにしろ短期間審議の影響と懸念されます。最賃引上げが持続可能な経済の好循環につながること、現実にコロナ禍での政府の中小企業支援策が機能していないこと、東京地評をはじめ労働組合が広範な要求に基づいて最低賃金引き上げと真水の中小企業支援策をセットで要求していることなど、中小企業経営者団体と共通理解が深められなかったことは強く危惧されます。
東京地評は、全国一律最低賃金制度と時給1500円の最低賃金額を定め、その実現を保障する中小企業への有効な直接支援策が、すべての労働者の賃金底上げと中小零細業者の経営を底支えし、国内消費の喚起、持続可能な経済発展の土台となると考えています。そのため異議申立に取り組み、答申額の再審議を強く求めていきます。
東京地評は、早期に全国一律の最低賃金時給1500円を実現すべく、広範な世論に訴えて社会的賃金闘争を強化し、中小企業団体とも積極的に懇談して共通の理解を幅広く深めます。
東京地方労働組合評議会
事務局長 井澤 智