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東京地評・東京春闘が記者会見 都内の時給平均 前年比わずか10円増
2021.12.23

 東京地評・東京春闘共闘は都内のパートアルバイトの募集時給に最低賃金改定がどう反映しているかを十数年にわたって調査を続けてきました。12月21日、調査結果を公表し、厚生労働省記者クラブで記者会見しました。

 2008年からの推移と特徴を静岡県短大中澤秀一准教授が分析しました。近年では最賃水準との差が縮小している傾向がはっきりしてきました。

 今年は求人広告などから3487件を集計したところ、全都平均時給は1161円で、昨年比10円しか上がっておらず、最賃の上げ幅28円を大きく下回っていました。

東京都パート・アルバイト募集時給調査の結果報告(記者会見発表内容の概要)

○東京春闘共闘会議では、2004年より毎年10月に最賃改定後のパート・アルバイト募集賃金調査を行っている。今回は、東京都における非正規労働者の実態を賃金の側面から考察するものである。

○具体的な調査内容は、最低賃金が改定された直後の毎年10月に新聞折り込み求人誌(「アイデム」「ユメックス」「「クリエイト」「タウンワーク」等)を都内各地域から回収し、パート・アルバイトの募集時の時給や労働条件をチェックしたものである。

〇本調査のこれまでの累積データ数は35000件を超えており、18回目となる2021年調査では3487件のデータを収集している。

○21年10月時点での、東京都内のパート・アルバイトの募集時給の平均額は1,161円で、前年比10円プラス。10月に改訂された最低賃金は28円プラスしているので、その最賃増加額ほどは増加していない。なお、募集時給の最頻額や中央額は昨年比で変化していない。

○パート・アルバイトの募集時給(平均額、最頻額、中央値)のこの10数年の推移は、かつては最賃の水準よりも高い水準であったのが、近年では最賃に接近してきており、最賃2割増の近傍ライン内に収まっている。ちなみに、この傾向は、東京都に限ったことではなく、全国的な傾向である。

〇地域別にみてみると、23区内は平均額が前年比9円プラスで最頻額や中央値に変化はないのに対して、三多摩地区では、平均額は前年比で5円プラスに止まっていて上げ幅が小さい(ただし、最頻額は37円プラス)。

〇職種別にみてみると保健師、看護師、歯科衛生士などの国家資格が必要な職種や、コールセンターなどの感情労働の職種は比較的高い募集時給である一方、ほとんどの職種では最賃2割増以下であり、介護や保育の現場で働くケア労働者の募集時給は全職種の平均水準であり、その専門性に見合った賃金であるとは言い難い。

〇職種別の募集時給(平均額)について、コロナ禍前後の推移をみてみると、多くの職種でそれほどランキングに変化がなかったなかで、一般事務・医療事務のランクが上昇する一方で、娯楽場等の接客は下降している。

〇2019年に東京地方労働組合評議会(東京地評)では、25歳の若者が普通に一人暮らしをするために必要な費用を科学的データにもとづいて明らかにしており、東京都北区モデルでは、男性=月額249,642円、女性=月額246,362円がそれぞれ必要であるという結果が出ている(税・社会保険料込)。この月額を、賃金収入で得ようとすると、時給換算で1400~1500円ほど(中央最低賃金審議会で用いる労働時間=月173.8時間で除した場合)になる。多くのパート・アルバイト労働者の募集時給は、この金額に達していない。

 記者会見の資料(以下)

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