HOME活動事務局長談話ロシアのウクライナ侵攻1年、即時撤退と平和解決を強く求める
事務局長談話
ロシアのウクライナ侵攻1年、即時撤退と平和解決を強く求める
2023.02.22

東京地方労働組合評議会
事務局長 井澤 智
東京地評・全労連加盟単産地域協議会
事務局長 屋代 眞

1 ロシア・プーチン政権によるウクライナへの軍事侵攻から1年。2度にわたる世界大戦の惨禍を教訓に、世界の諸国民と国際社会が積み上げてきた平和への努力を根本から破壊する無法・無謀な侵略戦争は、ウクライナ国民の強靭な抵抗もあり長期化している。ロシア・プーチン政権の蛮行は、ウクライナ国民のみならず、平和を希求する諸国民に対する挑戦であり、断じて許されない。
東京地評、東京労連協議会は侵攻から1年にあたり、ウクライナ国民と強く連帯し、外交・対話に基づく平和的手段による解決を呼びかけ、広く諸国民とも連帯し行動する。ロシア・プーチン政権に対し、野蛮な侵略戦争に強く抗議し、ウクライナの平和回復、主権侵害の停止、即時停戦と無条件の撤退、「戦争犯罪」など人道に対する罪や損害を国際法廷の下で償い、贖うことを強く求める。国際社会と日本外交には、核兵器使用と原発への攻撃という人類的危機を取り除くこと、国際社会が「政治体制・価値観の違い」を乗り越えて停戦・終結の一点で団結し、一刻も早い平和的解決への道を開くことを強く求める。

2 ロシア軍は、ウクライナの首都キーウを侵攻から3日で陥落させるとしていたが、稚拙な情報と戦略・戦術により侵略する先々で大敗を喫している。誤った見通しでの開戦は、自軍の人的被害を厭わない無能な盲目的攻撃となり凄惨を極め、必然的に戦闘部隊が各地で市民を虐殺する戦争犯罪を引き起こしている。また、ウクライナ全土で軍事施設以外の民間施設やインフラを多数ミサイル攻撃して破壊し、ウクライナ国民に塗炭の苦しみを与えている。
ロシア・プーチン政権の蛮行は、国連加盟国の主権・領土保全を尊重するという国連憲章の原則を蹂躙するものである。ロシアは国連安保理常任理事国であるにもかかわらず、国際社会で重責を担う一員としての責任を放棄し、世界から糾弾される侵略戦争を開戦するという極めて悪しき姿勢に堕した。

3 ウクライナのゼレンスキー大統領は侵攻開始直後から国民に対して徹底抗戦を呼びかけ、戒厳令と総動員令を発令し、18歳から60歳の男性市民の出国を全面禁止し徴兵している。戦争は長期化し、予断を許さない情勢となっている。
ウクライナへの侵略戦争は、ロシア・プーチン政権に全面的な責任がある。一方、G7と西側諸国、NATO加盟国のウクライナ支援は、武器供与に極端に偏っており、戦争の長期化・激戦化の火に油を注いでいる。戦場は、最新兵器の人体実験場と化し、ウクライナ国民とロシア軍の血の犠牲の上で、世界の武器商人・軍事産業は莫大な利益を上げ続けている。この現実が明らかにしているのは、西側先進国を中心とした国際社会が、戦争終結を目指す真剣な外交努力を「後回し」にしているということだ。命を奪われているのは罪なきウクライナ国民と戦場に駆り出されたロシアの軍人だ。
西側諸国の軍事支援に対し、プーチン大統領は当初から核兵器の使用も辞さないとの言語道断の脅迫を持って対抗してきた。核戦争の危険性を警告し、人類滅亡までの残り時間を象徴的に示す「終末時計」の残り時間は過去最短の「90秒」になった。

4 NATOはそもそも東西冷戦時代への導火線であり、旧ソビエト連邦・東側諸国を封じこめるための軍事同盟だった。1991年の冷戦終結後に基本的役割を終えたはずだ。しかし、米国主導のNATOは域外への軍事行動へと踏み出し、アフガン戦争では現下のウクライナ侵略戦争に劣らない19万人もの人的・人道上の被害発生に加担し、世界最貧国の社会秩序を根底から破壊した。加盟国の拡大、加盟国へ軍事費をGDP2%に増加することも主導、加盟各国において貧困と格差を拡大する要因となり、国際社会の秩序と正義の重大な障壁となってきた。NATO加盟国増加と域外軍事行動の展開は、ロシアを「包囲」し、プーチン大統領に脅威を与えたことは事実である。
しかし、どんな理由をもってしても侵略戦争は正当化できない。ロシアの軍事侵攻は、フィンランド、スウェーデンのNATO加盟を後押しし、自らの首を絞める愚かな結果を招いている。

5 戦争の構図は、「侵略者ロシア」と「西側・NATO加盟国」との対立へと変化した。米国が主導するウクライナへの軍事支援の輪は、50カ国が参加する「ウクライナ防衛グループ」の枠組みとなり拡大、欧州情勢は「新しい戦時体制」へと危機が増大している。「ウクライナに戦場を限定した世界大戦」の様相であり、第3次世界大戦となる危険性は排除できない。
西側・NATO加盟国は、「ロシアの消耗戦戦略に耐えうるだけの兵器」をウクライナに供給し、ウクライナ国民の犠牲でロシアを徐々に弱体化させることが目的となっている。戦争長期化を視野に入れた欧米兵器産業の増産体制は、武器輸出国の特需と世界各国の軍事費増加となり、4年にわたるコロナ禍で疲弊した各国財政をさらに悪化させ、貧困と格差を広げるだけでなく、他のあらゆる地域での戦争の火種を撒いている。
ウクライナは「勝つことも負けることも許されない」地獄の戦場を、あと何年も戦わされることになる。
NATOはウクライナ侵略戦争を糧に「戦争同盟」として復活し、世界の政治と経済の上に立ち、軍事中心の世界秩序の再構築を諸国民に強制している。NATOそのものが世界平和に対する脅威である。

6 アジア地域では、ロシアの侵略戦争に加え、中国の海洋進出や北朝鮮のミサイル発射実験などを奇禍とし、日本が言い出した「自由で開かれたインド太平洋 (FOIP)」や「クアッド(Quad)」などと称した軍事同盟づくりが動き出している。この「同盟」はNATOと連携し、北半球で世界を一周する軍事同盟への発展が企まれている。
NATO、FOIP、Quadが敵国と見なすのは中国であり、ロシアと北朝鮮だが、威嚇の対象は権威主義的国家にとどまらない。
グローバルサウスと呼ばれる南半球の国々は、貧困と格差の拡大は新自由主義による先進国・多国籍大企業の横暴と搾取に原因を見ている。その解決に、独自の社会政策や外交政策を持って歩み始めている。ここに、意図的な分断と差別、社会的混乱が持ち込まれている。
北半球で世界を一周する軍事同盟は、社会正義を求める諸国民に脅威を与えている。

7 日本では、米国の安全保障戦略に基づいて「安保3文書」の改定が行われ、国民の信を問わずに敵基地先制攻撃能力の保持とGDP2%の大軍拡・大増税、9条改憲という「戦争する国」づくりが加速している。「台湾有事」を大手マスコミが宣伝し、日本においても戦争の危機が煽られている。「台湾は中国である」、「『安保3文書』」の仮想敵は中国だ」。
米国主導の安保政策は、日米中の全面戦争も想定し、日本を戦場とし全土を焦土とするような極めて危険な戦略である。この道にすすむために、国民に大増税を強いるなど愚策であり、断じて許されない。
岸田自公政権が、国家間の紛争を武力・戦争で解決する道を選択すれば、犠牲になるのは日本国民である。
国際社会において国連憲章に基づき、話し合いの道を閉ざさず、平和的な外交を選択することが、日本国憲法に基づいた真に勇気と道理のある政策である。あらためて広く世論に訴えることが必要だ。

8 ロシア・プーチン政権によるウクライナ侵略戦争を停止するには、日本政府も含む国際社会・国連が、戦火を拡大する軍事的支援だけでなく、国連憲章と国際法にもとづき、あらゆる話し合いの道筋を閉ざさず、外交的・政治的な打開の努力を尽くすことが求められる。
東京地評、東京労連協議会は、日本国憲法が有する平和原則の実現、「核兵器のない世界」を求める世論を国内外に広げ、ロシア・プーチン政権による侵略戦争の即時停止、無条件の即時撤退、戦後補償と復興を求めて行動する。第3次世界大戦や核戦争、原発への攻撃という人類的危機を阻止するため、全都の各地で様々な行動を、戦争終結まで継続する。
 大国が核戦力を保持する現代の国際的な戦争は、軍事対軍事では解決できない。国際社会のルールに基づき、世界の諸国民の平和的な運動と圧力によってロシアを外交の場へと引き出し、話し合いによる解決に導く努力を惜しまないことが、どんなに勇ましく聞こえる軍備増強の空元気・戯言・遠吠えが足元にも及ばない真の勇気ある解決手段である。
全世界の平和を願う労働者・国民と団結し、この危機を阻止すべく奮闘する。

関連タグ:なし