HOME労働相談の事例集第185回 オルグの現場から 151 ジェンダー視点からのチェックが重要
労働相談の事例集
第185回 オルグの現場から 151 ジェンダー視点からのチェックが重要
2020.04.15

契約社員として大手企業に入社し、10年以上勤務している50代の女性。すでに無期雇用契約にはなっているが、労働条件の良い正社員になるために転換試験をこれまで5回受けてきた。筆記試験はずっと合格しているが面接で落とされる。加入している労働組合の役員には年齢で駄目なのではと言われたが、定年は65歳なのにそんなことがあるのか、という相談。

「合格したのはどんな人ですか?」「若い男性はすぐ合格している。年齢で落とされるのであれば、いつまでもこんな試験に精力を費やすなど無駄なことだと思って。勉強は大変なのですよ」。とのやりとり。

まさにジェンダーの問題だ。しかもジェンダー平等につながるエンパワーメントのための努力がこのように阻害されてしまうのである。まず選考内容についての公開(応募者数と合格者数、男女別の内訳、年齢別内訳など)や選考基準について、加入している労働組合に団体交渉してもらうことを勧めた。さらになぜ自分が合格しなかったについて明らかにすることも。これらの目的は、公正な選考基準を形成すること、公正な転換試験が行われるようにすることだ。

仮にいま加入している労働組合が取り組んでくれなかったらどうするか。個人加盟の労働組合など、理解してくれる別の組合を探して加入することになるだろう。もちろん裁判という手段もあるが。今回のように年齢を重ねた女性を低く評価することを当然とする風潮がある。ジェンダーバイアスだ。会社と加入している労働組合の両方に対してのジェンダーの視点からのチェックは、労働問題の解決のためにも重要である。

佐伯芳子(東京地評労働相談員)

関連タグ:なし
掲載年