HOME労働相談の事例集第190回 オルグの現場から 156 働く権利の周知徹底を
労働相談の事例集
第190回 オルグの現場から 156 働く権利の周知徹底を
2020.09.15

美容室勤務のAさん。

有給休暇の取得をオーナー(他にも数店を経営)に話したら、「うちには有給休暇の制度はない」と言われた。この発言は正しいのかという相談。有給は一定期間勤務した労働者に対して、心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するために付与されるものであって、あきらかに労基法違反。会社の近くにある組合への相談と、労基署への申告を勧めた。

映像制作会社に勤務4年のBさん。

入社以来、定時に仕事が終わることはまれで、時には終電間近まで。残業代は今までもらっていないので疑問に思うという相談。法定時間を超えて働く(時間外労働)の場合は、政令で定められた割増率で計算した割増賃金を払わなければならない。また、これまで出ていないなら2年の遡及権利があることを説明。解決のために同業種の産業別組合への相談を勧めた。

専門学校の教師Cさん。

今まで男性教師が生徒の家庭訪問を行っていたが、上司からの命令で家庭訪問に行くこと。自分としては相当な負担、これってパワハラではないか。辞めようと思ったが同僚に迷惑をかけるのでどうしたらいいかという相談。パワハラなのかどうか判断が困難なケースがあり、命令する人とそれを受ける側では精神的負担が異なる。会社近くの地域労連への相談を勧めた。

企業は労働者の安全配慮義務や働きやすい職場環境を保つように配慮すべき職場環境配慮義務を負っている。問題が生じたら使用者の民法上の不法行為責任(民法第709条、第715条)が問われる。

これらの相談事例は職場に組合があれば即解決する内容。最低ラインの権利を身につけることが必要と感じる。

小原正幸(東京地評労働相談員)

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