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東京で”ふつう”に暮らすには時給「2000円」必要 【最低生計費試算調査2025年版】
2025.06.23

 東京地評は2025年6月23日(月)、厚生労働省で記者会見を行い、最低生計費試算調査の結果を発表した。25歳単身者(北区モデル・世田谷区モデル・杉並区モデル)を想定し、ふつうに暮らすにはいくら必要かを試算したもので、2019年の調査(以下)のバージョンアップ版となる。

 調査手法は、主に東京地評に加盟する各単産・ユニオンの労働者などを対象に、生活のパターンを調べる「生活実態調査」および持ち物をどれくらい所有しているのかを調べる「持ち物財調査」を実施し、その結果を精査し生活に必要な費用をひとつひとつ丁寧に積み上げる、マーケット・バスケット方式を採用し、科学的に算定したものである。

時給1901円~1964円(杉並区モデル)が必要との結果

 2022年から本格的に始まった物価高騰の影響を加味して前回の結果をアップデートしたところ、2025年4月時点における健康で文化的な生活に必要な費用は、世田谷区モデルでは男性で月額29万6,560円、女性で同28万7,089円、北区モデルでは男性で月額28万5,034円、女性で同27万5,663円、杉並区モデルでは男性で月額29万4,578円、女性で同28万5,107円であった(いずれも税・社会保険料込み)。

 上記の調査結果(月額)を、中央最賃審議会が用いている月173.8時間の所定内労働時間で換算すると、北区で1,586~1,640円、杉並区で1,640~1,695円、世田谷区で1,652~1,706円となる。現行の最低賃金額=1,163円とは大きな差がみられる。さらに、人間らしい労働時間である月150労働時間で換算すると、北区で1,838~1,900円、杉並区で1,901~1,964円、世田谷区で1,914~1,954円となる。

 今回アップデートされた試算結果を前回の試算結果(税等抜きの必要生計費)と比較すると、平均11.9%上昇している。賃金がこれだけ上昇していなければ労働者の暮らし向きがより苦しくなったことを意味する。実質賃金は現在4か月連続でマイナスの状態である(2025年6月23日現在)。

 昨年10月の最低賃金改定により、東京都における最低賃金額は50円(4.5%)引き上げられ、1,163円となっている。しかしながら、今回のアップデートした結果からみると、低水準であると言わざるを得ない。最低賃金は少なくとも時給1,600~1700円、人間らしい労働時間を加味すれば時給2,000円ほどの水準が必要であり、政府の掲げる「2020年代に1,500円」の目標は低すぎると言わざるを得ない。

以上

全国一律制の実現へ法改正を

 石破政権は「2020年代に全国平均1,500円という高い目標の達成に向け、たゆまぬ努力を継続する」としているが、もはや1,500円では“低い目標”であると言わざるを得ない。今回のアップデート結果からみれば、「2020年代に2,000円」という目標が妥当なのである。
 さらに、「全国平均」も問題視せねばならない。なぜならば、「生計費は全国どこでもほぼ同水準」であるからだ。現行の最低賃金は地域別に定められており、現在でも最大212円もの格差が存在する。この最賃格差が都市への人口流入(地方にとっては人口流出)を招いており、東京などの大都市では人口の過密が起こる要因となっている。最低賃金は全国一律制に移行すべきである。
 できるだけ速やかに法改正を行い、最低賃金額を先進国として恥ずかしくない水準にまで全国一律で引き上げなければならない。そのための条件として、中小企業に対する支援策を充実が望まれる。

記者会見資料は以下の通り

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