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事務局長談話
『2020東京オリンピック・パラリンピック』大会は中止・延期し「新型コロナ」対策に力を結集しよう
2021.05.12

 政府は、「新型コロナ」パンデミックから1年6ヵ月を経過してなお感染拡大に有効な施策を実行せず、感染第4波により3度目の緊急事態宣言の発令・延長を招き、収束は見通せません。2021年夏の『2020東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京五輪)』は、都民と参加選手・関係者の命とくらしを守り、医療を守り、安心安全の生活への回復のみならず、世界的視野からも開催を断念すべきです。政府と五輪主催団体は、世論調査で7割近くが中止・延期を求め、中止を求めるネット署名が数日で30万筆を超えた民意を受け止め、今すぐ中止・延期を決断し、「新型コロナ」対策の抜本的強化に全力を集中すべきです。

 東京地評は、開催都市東京のたたかう労働組合の連合体として、開催当事者である日本政府、東京都、大会組織委員会、JOCに対し、開催の決定権を持つ国際オリンピック委員会(IOC)と協議して中止・延期を決定するよう強く求めます。五輪の理念と精神、歴史的意義に立てば、人々の命と暮らしを守るため、開催中止・延期の選択肢以外は考えられません。

 現在、政府と五輪主催団体は開催強行の方針に固執しています。「新型コロナ」パンデミックは世界各国で猛威を振るい続け、インドや隣接する東南アジア諸国、中南米においては医療崩壊に至っています。先進国から開始されたワクチン接種も、一部の富める地域での普及であり、パンデミック収束の兆しは見えていません。この状況下で大会を開催すれば国境を越えた人流によって「人々の命を奪う五輪」となりかねず、もはや平和の祭典ではなくなります。五輪は、開催期間中に全世界の紛争当事者・国々に対し停戦を呼びかけるなど、スポーツを通じて国際交流を深め世界平和への道を歩む舞台でもあります。

 菅首相が開催の判断をIOCに丸投げし、責任回避に遁走する姿勢は政治家としての最低限の資質を欠いています。開催国の政府として、国民の命を守る立場から中止・延期を決断する時です。全国の「新型コロナ」重症者数は連日最多を更新し、変異株による早期重症化のケースが急増しています。大阪府では、医療従事者の命がけの奮闘にもかかわらず「医療崩壊」により重症患者の入院先が確保できず連日数十人が亡くなっています。政府が全力を集中して支援すれば救える命が、失政により失われています。

 いま、菅首相と政府は日本の医療崩壊を防ぐことに全力を挙げるべきです。

 東京五輪が開催されれば、世界から1万5千人の選手・コーチ、関係者や参加国の政府要人など9万人が来日するといわれています。無観客で開催し、五輪関係者の外部との接触を断つと言っても完全に感染を防ぐ保障はありません。

 国内で医療体制が切迫する事態にもかかわらず、組織委員会は日本看護師協会に対し500人の看護師の確保を依頼し、スポーツドクター200人を募集しました。現に一刻を争う入院先が見つからない重症患者の対応より、五輪関係者へのコロナ対策を優先する姿勢には、本来の五輪精神のかけらも見当たりません。人流を抑制するコロナ対策とスポーツによる国際交流をめざす五輪開催は両立できません。日本政府は真の五輪精神に立脚し、世界の感染収束の努力に連帯するメッセージとして東京大会の中止・延期を発信すべきです。

 各国のアスリートは、開催となれば選手生命をかけて出場したいのは当然です。一方で、五輪は世界の国民の応援と共感があってのスポーツイベントであり、毎日数千人が感染で亡くなる下での開催に、選手も戸惑いの声を上げています。また、出身国による準備にも多大な格差が生じます。東京開催に、感染のストレスと厳しい制限で満足のいくパフォーマンスを発揮できない懸念もあるでしょう。大会のために医療資源が確保され、そのことで救える命が救えないなど考えたら競技に集中することもできません。いま、政府と五輪主催団体の無為無策により、責任のない選手に開催の是非を問う声が寄せられ、選手をさらに苦しめています。選手を守り、健全なスポーツの発展のためにも中止・延期を決断すべきです。

 東京五輪は準備期間を通じて国民的な世論に後押しされ、開催経費の問題や既存施設の利用優先、マラソンコースの変更、バリアーフリーを国際基準に近づけ障害者の「多様な観戦の権利」を保障する環境の整備が進められるなど、一定の前進面もありました。

 同時に「新型コロナ」パンデミックは、日本をはじめ世界的問題である貧困と格差を拡大する資本主義システムの構造的欠陥を浮き彫りにし、五輪の準備と開催にいたる経過においても構造的な格差問題を顕在化しました。開催規模・経費の巨額化、選手のコンディションよりもスポンサーを優先する開催時期と競技時間の設定、招致をめぐる利権や買収、IOCの運営・機構など、グローバル大企業が莫大な利益機会として五輪の運営の細部まで介入し、五輪の基本である市民と市民スポーツの健全な発展が軽視されています。五輪は、抜本的な改革が求められています。

 東京地評は、医療現場で患者の命を救うべく奮闘する医療従事者、東京五輪の準備から現在まで携わる公務・民間の多業種の労働者を組織する労働組合として、労働者の安全と雇用、すべての国民の命とくらしを守り、また、開催の影響を受ける子供たちと保護者、教職員の要望に立脚し、2021年夏の東京大会は中止・延期を決断し、「新型コロナ」収束に全力を集中することが必要であると結論します。

 「新型コロナ」感染拡大により、とりわけ多数の非正規労働者、女性労働者が経済的困窮を強いられています。東京地評も共催した『食料支援プロジェクト』でも、深刻な貧困の実態は明らかです。五輪延期の追加費用は3000億円にも上り、さらにコロナ対策費用がどれだけ上乗せされるか予想できません。

 東京地評は、東京五輪の2021年夏の開催を中止・延期し、五輪に投入される総力を国民の命と暮らしを守る医療体制の拡充、自粛と補償一体の支援拡充、窮乏にあえぐ労働者を救済するよう日本政府に強く要求し、五輪主催団体にも中止・延期を要請します。

東京地方労働組合評議会

事務局長 井澤 智

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