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労働相談の事例集
第183回 オルグの現場から 149 助成制度を悪用した事案
2020.02.15

文京区には多くの旅館・下宿があった。今も少なくなったが存在している。角木さん(仮名・現在67歳)18年7月、ハローワークで紹介された文京区内の旅館に「住込み」(部屋代・食事代・光熱費無料)で調理関係の仕事をしている。午前6時から8時半まで、午後は夕方4時から夜8時半までの合計一日実働7時間のシフト勤務。時給は1510円でタイムカードはなし。角木さんとともにカウンター業務を主に行っている田中さん(仮名・現在71歳・英語、中国語が堪能)と一緒に区労協事務所に相談に来た。

相談内容は①職場環境・シフトの直前変更問題・人間関係、②残業不払い(日中の休憩時間中の食材購入、外国人の方々の飛行機延着による深夜のカウンター業務)。

①は社長の子息と調理関係の仕事をしている女性が「結託」し、前月に決めた翌月の勤務シフト表を直前でも頻繁に変更。角木さんや他の従業員の休日や通院時間まで変更を余儀なくされ、人間関係にも悪影響を及ぼしていた。「住込み」を考慮して都労働相談センターに依頼し、改善を経営者に申し入れた。数回のやり取りで会社は申し入れを受け入れた。

②についてもほぼ決着し、休憩時間の確保や定時に終業することが出来るようになった。当該の方が組合事務所に来ることが難しく大変時間がかかった事案であるが、「住込み」労働者の抱えている「居住」問題は区議会議員等と相談しながら今後対応していくことにした。これらの背景には、高齢者を雇用すると助成金が受けられる制度【特定求職者雇用開発助成金、65歳超雇用推進助成金】が存在するものと思われる。

伊藤弘(文京区労協・CU文京支部ボランティア労働相談員)

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