労働相談の事例集
第188回 オルグの現場から 154 個人加盟労組の結成と活動の強化を
2020.07.15
1980年代にフィリピンから日本に来た女性。最初は大使館のメイドをしていたが、英字新聞の求人広告を見て応募し、30年前、ある商社に就職した。英語力を生かすことで可能となった転職であった。在留資格も「人文知識・国際業務」に変更し、現在は永住。
その後も、同じ会社に正社員として勤務し、60歳の定年を迎えた後は、再雇用となって1年契約を更新していた。ところが、ある日、上司から暴言をはかれ、その言葉が胸に刺さり、もう耐えられないと思った。
そこで何かあった時のためにと、既に加盟していた個人加盟の労組に泣いて電話したところ、すぐに休んで病院に行けと言われたとのこと。その後、会社との団体交渉が何回か行われた。
会社は辞めさせるつもりはないと主張したが、本人は耐えられない、辞めたいと主張。賃金や住宅手当が、フィリピン人だからと他の国の出身者より差別されていたことの他にも、彼女には積年の怒りがあった。会社は日本人だけを社会保険に加入させて、外国人労働者は加入させていなかった。30年間勤務したのに、年金の権利が全くなく、退職金の規定もない。ジェンダーとエスニシティの問題である。
怒りと要求をもとに繰り返された団交で、最終的に、雇用保険の会社都合退職の手続きを行うこと、日本人並みの退職金を支払うことで解決した。彼女は30年以上日本にいて、息子は日本の大学に通うが、彼女の日本語は十分ではない。しかし、国籍と企業種を問わず、1人でも加入でき、要求をもとに闘う労働組合の存在は大きく強かったと言う。もっと多くの個人加盟組合の設立と活動、発展を期待する。
佐伯芳子(東京地評労働相談員)
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