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労働相談の事例集
コロナ禍で可視化された労働者の実態 ーオルグの現場から162ー
2021.04.21

◆大手イベント会社と契約しシフト制で働くAさん(勤続2年)。コロナの影響で多くのイベントが中止になりシフトに入れなくなったが、会社は支払い義務がないと休業手当を払わない。仕方がないのか、という相談。事業主の責に帰す事由による休業の場合は休業手当の支払いを義務づけている(労基法26条)ことから労基法違反だと説明、組合に加入し団体交渉を行うことを勧めた。

◆Aさんは即日組合に加入し、①休業手当②有給取得保障③雇用保険の遡及加入を団体交渉で要求した。会社は「契約は日々雇用。だから休業手当も、有給休暇も雇用保険の加入義務も発生しない」と主張。それに対しAさんの勤務実態から雇用保険法42条が規定する日々雇用には該当せず常用労働者にあたることを説明、雇用保険への自発的な加入を促した。しかし、会社は手続きを取らず、Aさんと組合はハローワークに出向き雇用保険に遡及加入させた。

◆にも関わらず、会社は依然として常用労働者とは認めず休業手当の支払いを拒み続けているため、新型コロナウィルス対応休業支援金・給付金制度が大企業で働くシフト制労働者にも対象拡大されたことから、休業支援金の事業主協力を求める交渉へ切り替えた。交渉で会社は協力すると明言したが、今後の動向を注視する必要がある。

◆この相談事例はまさに、これまで景気に支えられ表面化しなかった脆弱な生活基盤の人たち(非正規・低収入・住み込み・ネットカフェ生活者等)がコロナ禍により可視化された事案ではないだろうか。頑張って働いても普通の生活ができない労働者の実態の社会問題化、社会保障制度等の拡充が必要だと痛感する。松井優希(地域労組こうとう書記次長)

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