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東京地評2023年7月「賃金・暮らしアンケート」結果から見えてきたこと
2023.08.22

東京地方労働組合評議会 鎌田建

1. はじめに

 東京地評は、時給制労働者や、2022年12月26日に行った「おこめフードバンク」でのアンケート・ヒアリング協力者に対し再調査をすることにより、物価高が生活や将来見通しに悪影響を及ぼしつづけていることを明らかにし、低賃金労働者世帯への物価高騰に関する生活対策と賃金引き上げを求める取り組みの基礎資料とすることを目的に、「賃金・物価に関するアンケート」に取り組んだ。

 アンケート項目を作成するにあたり、東京大学大学院経済学研究科教授・渡辺努氏の研究室による「5か国の家計を対象としたインフレ予想調査(2023年3月実施分)」を一部参照した。

2. 概要

 6月28日(水)~7月28日(金)、時給制労働者を対象に、「賃金・暮らしアンケート」に取り組み、44人から回答を得た。うちの21人は「おこめフードバンク」の来場者であり、7/5~7/28までの間にアンケートとあわせてヒアリングにも協力を得た。

3. アンケートから見えてきたもの

 回答者の71%が東京23区在住で、66%が女性だった。40代が43%と一番高く、次いで50代が32%、20代が11%、60代が5%だった。アンケートから見えてきた2つの特徴を提示する。

特徴① 低賃金労働者は値上げ(物価高騰)を受け入れることができない実態が明らかに

 渡辺努研究室の「5か国の家計を対象としたインフレ予想調査(2023年3月実施分)」における「あなたがいつも行っているスーパーでいつも買っている商品の値段が10%上がったとします。あなたはどうしますか?」の問いには、同じ店で同じ商品を買い続ける(=値上げを受け入れる)としたのは52%で、別の店に行く(=値上げを受け入れない)は48%であった。対する時給制労働者を対象にした東京地評の調査では、同じ店で同じ商品を買い続ける(=値上げを受け入れる)としたのは34%で、別の店に行く(=値上げを受け入れない)としたのは66%であった。

 国民全体が値上げ(物価高騰)を受け入れざるを得ない状況があることが渡辺努研究室の調査により析出されているが、時給制労働者をはじめとする低賃金労働者は、値上げ(物価高騰)を受け入れることができない実態が明らかになった

 こうしたことから、値上げ(物価高騰)に関して階層を分けた入念な調査が必要であると同時に、低賃金労働者に対しては速やかな物価高騰対策を講じる必要がある。

特徴② 賃金引き上げ要求額(平均)は昨年より80円上昇

 東京地評アンケート調査の「時間給であとどのくらい必要ですか?」の問いについて、2022年12月調査(102人回答)と2023年調査を比較すると、一番高かったのはどちらも「500円以上」であったが、2022年12月の32%から2023年7月には45%に上がっている。また、次に回答数が多かったのは、2022年調査では「200円(31%)」であったが、2023年調査では「300円(17%)」という結果となった。

 賃上げ要求額の平均は、2022年調査が267円であったのに対し、2023年調査では347円と、80円上昇した。

4. 小括・課題  時給制労働者の賃上げ=最低賃金の引き上げこそ求められる

 東京地方最低賃金審議会は8月7日、10月改定の東京の最低賃金の答申を、中央審議会の目安額に添って41円引き上げる(時給1113円)としたが、到底物価高騰に追いついておらず、不十分な金額である。低賃金労働者をはじめとする時給制労働者の賃上げ=最低賃金の引き上げこそ求められる。

 私たち東京地評・東京春闘共闘は、2019年に調査・発表した「最低生計費調査」に基づき、あらためて早期に最低賃金を1500円にするよう求める。

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