東京都議会議員選挙が、6月13日告示、6月22日投開票で行われます。
東京で働くすべての労働者にかかわる重要な選挙であり、また、12年に1度かさなる参議院議員選挙の前哨戦となる首都東京の選挙、昨年の衆院選で示された自民党政治に対する審判に対し1400万人都民があらためて答えを出す選挙です。
都の予算はスウェーデンの国家予算並み
東京都の2025年度当初予算は、一般会計総額は9兆1580億円に上り、予算規模は4年連続で過去最大となり、初めて9兆円を突破しました。基金を7000億円取り崩し、事業の見直しで1300億円を捻出、大型開発事業への積極財政が際立つ内容です。
特別会計などを含めた全会計の総額は17兆8497億円で、スイスの14兆7000億円を大きく上回り、スウェーデン(人口1055万人、東京都の約74%)の20兆円の国家予算に近い規模です。スウェーデンの2024年の軍事費は、国内総生産(GDP)比2%、円換算で約1兆2000億円に上り、東京都予算にない軍事費を差し引けば同じような予算規模です。地方自治体と政府による政策施行は異なるもので、単純に行政サービスを比較の対象とすることはできません。しかし、世界幸福度ランキング(2025)で日本は55位、スウェーデンは4位という差は、政治の力、予算の配分と精査で埋められます。
都民生活置き去りに大型開発すすめる「知事与党」
都議会の定数は127議席で、第1党は自民党、次いで都民ファーストの会、公明党の議席となっていて、この3党は小池都知事の政策を後押しする「知事与党」です。
小池都政の8年は、2020東京五輪への莫大の税金の投入とコロナ禍での強行開催による犠牲者の拡大、五輪後も続く大規模開発により投機対象となる東京の出現、プロジェクションマッピングによる60億円以上の無駄遣いや、お台場の26億円噴水の建設など、都民生活の向上とは関係のない事業が「爆速」で進んでいます。
一方、小池都政は水道料金滞納による給水停止を容赦なく実施し、知事が就任時の2016年度の給水停止件数は約10.6万件、22年度は約18万件、23年度は約16.6万件と激増しています。滞納世帯に対し訪問して支払いを求めていたのを、効率化を理由にやめ、督促状を送り支払いがないと水道を止めるため、生活困難の実態が把握されないまま無情な給水停止が増加しています。水道は止められれば命を脅かします。
都民には容赦なく給水停止し、お台場の巨大噴水では大量の水道水を噴き上げ海に垂れ流す。水もお金も出すところが違います。水道料金の消費税分の10%の引き下げに必要な額は約195億円で、知事の判断1つで実施できます。
都民の要求によって実現した水道料金の基本無料化
6月の都議会第2回定例会で、水道料金の基本料金無料化を盛り込んだ東京都の補正予算が可決されました。物価高騰対策として一般家庭の今夏4カ月分の基本料金を無料化するもので、1世帯当たり5000円程度の負担軽減となります。
東京地評・都民連等は、複数回にわたって、東京都に水道料金の軽減を求めてきました。さらに、都議会においては、日本共産党都議団が、都議会の質問や知事宛ての申し入れなどで、物価高騰対策として水道料金を引き下げるよう繰り返し求めてきました。昨年8月や今年4月には緊急の申し入れを行い、予算都議会でも取り上げました。
公明党が自民党、都民ファーストの会とともに、都に水道料金の引き下げを要請したのは、都が基本料金無料化の方針を発表する前日でした。「読売」2日付は3党の要請を「要望を政策に反映させたとの演出で、3党に花を持たせた」と指摘しています。水道料金の基本料金無料化は、都民の要望と、それを背景にした東京地評や都民連、協力・共同する多くの市民団体による粘り強い要望と運動があったからこそ実現したものです。
賃上げと中小企業の直接支援を
参議院選挙を直後に控え、各党は国政の前哨戦として国政選挙並みの態勢で臨む方針です。党派選挙であり、東京地評は特定の政党の候補者を推薦・支援することはしていませんが、2024東京都知事選挙で確認された市民と野党の共闘をベースにした都政要求実現を求める立場で選挙情勢を分析しています。
莫大な東京都の予算を東京で働く労働者の賃金の底上げ、賃金を引き上げた中小企業に対する直接支援などに活用すれば、最低賃金1500円を東京から実現し、地域経済からの好循環を生み出すことも可能です。
東京地評加盟組織の東京土建は、都議会会派に政策アンケートを実施しました(東京土建HPリンク先)。私たち働く人の要求に対する、各政党の政策・態度が分かりやすく掲載されていますので、ぜひ投票行動の参考にしてください。
東京地評として、組合員の皆様、東京で暮らす皆様にあらためて都議選での投票を呼びかけます。
東京地評事務局長 井澤智
東京地評の都政に対する基本要求
東京地評は、東京都政に対して、以下の基本要求および各組合の独自の要求に合致する政策・公約を掲げ、その実現への道筋を明確に示しているかどうかを政党選択、候補選択の基準とします。
- 1. 東京都の医療体制の拡充を求めます。医療・保健体制の抜本的拡充、医療機関への直接経営支援、医療従事者が安全に安心して働ける賃金・労働条件の確保。総合的な感染症対策を整備する。
- 独法化された「都立病院」の利用者サービスの維持、医療従事者待遇確保を強く求め、再公営化を視野に入れた抜本的な政策転換をめざします。
- 2. 最大の自治体として憲法の理念を社会に活かす都政の実現。
- 3. 潤沢な都財政を生かし、都内で働くすべての労働者の賃金引上げにつながる施策の実施。貧困と格差を無くし、雇用の安定と働くルールの確立。8時間働けば普通に生活できる賃金の実現。同一労働・同一賃金、非正規労働者と正規労働者の均等待遇を実現する。
- 4. 東京都が率先し、最低賃金を生計費原則に基づき生活できる賃金へと大幅に引き上げる。全国一律最低賃金時給1,700円以上の実現に向けて、最低賃金の引き上げと中小企業への真水の支援策を一体的に推進、拡充する。公契条例を制定する。
- 5.ジェンダー、人種、年齢、障がいなど、あらゆる差別を許さない。選択的夫婦別姓制度、LGBTQ+差別などない平等な都政の実現、東京都から性暴力を根絶するため実効性のある条例等整備を求める。ジェンター平等にもとづき、誰もが尊重される都政の実現。
- 6. 教職員の過酷労働の防止。1教室20人以下の少人数学級実現、特別支援学校においても同様の設置基準を設定。教職員の増員。教育の民間開放、民間試験の導入反対。侵略戦争美化の教科書採択阻止。
- 7. 零細事業者に対する課税強化反対。マイナンバーカード強制と取得しないことでの不利益反対。健康保険証廃止反対。マイナンバーの民間開放反対。
- 8. 医療、介護、保育、貧困対策など都による社会保障制度の拡充。公衆衛生・保健体制の拡充。教育予算の拡充、教育費の無償化。
- 9. 気候正義を求め地球温暖化・気候危機への対策を抜本的に強化する。CO2排出量の大幅削減。東電株主として原発再稼働・新型革新炉新設反対、再生可能エネルギーへの転換で原発ゼロの実現。福島原発事故被害者の支援。
- 10. 都民生活を破壊する自由貿易協定に反対。トランプ関税に対しては影響をうける中小企業への支援策をつくる。
- 11. 東京都の政治改革の実現、議会軽視の都知事専決処分の停止。
- 12. 住民サービス、公務・公共労働者の労働条件改悪となる行政の民間委託反対。都職員の増員。
- 13.すべての米軍基地撤去。横田基地へのオスプレイ配備反対。米軍基地からのPFASの漏洩防止の徹底と、東京都として米軍基地敷地内の徹底した調査。
- 14. 表現の自由や団体行動を制約する法・条例の廃止、撤廃。ヘイト・スピーチの防止。